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佐々木敦の批評ブログ
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2007年 07月 14日

日誌

・この半年ほど脳内で練ってきた新プロジェクトの内のひとつが愈々始動。今年後半は攻めますよ。
・ホースのレコ発決まりました!。お早めのご予約を。情報はココ!
・田代裕彦『赤石沢教室の実験』。『平井骸惚此中ニ有リ』や『セカイのスキマ』シリーズの注目の作家による、一部で話題の初ラノベ外ミステリ。ちょっと長いけど何とか終わりまで辿り着きました。途中まで一体何をやろうとしてるのかイマイチ分からず、これはもしかすると久々に驚かせてくれるかとドキドキしたのだが、そこまでのサプライズはないものの、裏の裏の裏をかこうとするあまり、ある意味もはや(論理的にもドラマツルギーとしても)誰が真犯人であっても構わないという開き直った事態に突入して久しい現今のニューロティック/乖離系ミステリの、ひとつの帰結、と読めなくもないような。でも出来れば道尾秀介ぐらいスマートにやってほしいですが。
・三鷹市芸術文化センターで、ポツドール「人間♥失格」。太宰ネタ。いつもの、といえば、いつものポツドールで、面白かったといえば確かに面白かったのだが、ウエルメイドもここまで来ると後は更なる洗練しかないのではないか、とも。しかし場所柄企画柄というか、客席には三鷹在住の善良な中高年、中にはすごいおじいちゃんとかもいたりして、いきなりテレクラに電話しながらオナる25歳ニートの姿を見せられて、あの方々はどう思ったのであろうか。以前、芸大音環でのイベントで、黒沢清演出・大友良英音楽の恐ろしく不気味な「風の又三郎」の上映に宮沢賢治ということで北千住のおばあちゃんたちが沢山集まってしまい、終わってから何ともいえないマズい空気が生じたことがあったのだが(笑)、その時にも似た作品自体とは無関係のサスペンスを感じたりもした。チケットを押さえてくれたユリイカの山本君と帰り途中まで。これから『ラザロ』を観に行くというので、君ならアレを貶せる筈だ(?)とマインドコントロールしておく。
・恵比寿のgift_labで、「instrumentalize」。出演は元WrKのm/sことSASWこと佐藤実、沖啓介、吉田アミ。大雨の中、道に迷いつつ辿り着いた(gift_labには初めて行ったのでなかなか見つけられなかったのだ)甲斐があった、とても充実したプログラムだった。まず佐藤さんのソロ・パフォーマンス「circuit model of physical vibration for power source」。「交流(AC電源)により変動する電磁力と重力を利用した1つの回路モデルである。コイル自身にかかる重力と引き上げようとする電磁力によって引き起こる力学振動は回路上での安定を求めて、多様な変化を生み出す」(佐藤さんのHPより)。とにかくラストがカッコいいんですよ。切れ味抜群のパフォーマンス。思わず観客からは叫声が漏れたほど。さすが「サウンドアートのハードコア」。続いて沖氏が吹くEVI(=Electronic Valve Instrument)と佐藤さんのガラス管の共演。EVIはサン・ラー・アーケストラのマーシャル・アレンも使っていることで知られる吹奏シンセサイザーで、見た目もオモシロい。そして吉田アミの、この日に合わせてリリースされた(アートワークに不備があったということで正式な発売はまだ先らしい)ASUNAこと嵐君が自ら始めたレーベルAO TO AOの第一弾でもある佐藤さん&アミちゃんのミニCD「COMPOSITION FOR VOICE PERFORMER」。1997年に、佐藤さん作曲の「曲」をアミが声でリアライズした演奏を何回も日時を変えて録音し、それらを織り重ねて作成した楽曲を、十年後の今年になってもう一度同じことをやって完成したという非常に興味深い作品。そして今日は更にその2トラックを流しながら生でヴォイス・パフォーマンスを行なった。十年という決して短くない歳月が、声と録音という身体論的=唯物論的機構に封じ込められている。アミの声、というか彼女の「音」があらゆる意味で凄みを増していることが明瞭に分かった。そして最後はふたたび佐藤さんによるソロ「NRF Amplification」。NRFとは「Natural Resonance Frequencies=自然共鳴周波数」の意味で、「マイクロフォンでガラス管の内部の音を拾い、次のガラス管で鳴らす。その音を拾い次へ。このようにして音のリレーを作り、ガラス管自身の響きをアコースティックに増幅していく。それと同時にガラス管同士の間でもフィードバックが形成される。そのためガラス管の位置関係やオーディエンスの動きなどに、高い周波数の共鳴音は瞬時に反応する。また、それぞれのガラス管の音量を微妙に調整することで複雑な変化を作り出すことができる」(佐藤)。現在、gift_labで先行発売中で、まもなく正式にリリースされる佐藤さんの12年振りのソロ作のリアライゼーションで、CDには6本のガラス管を使ったヴァージョンも収められているが、今日は2本のガラス管と3本の紙の管を用いていた。イベント名の「instrumentalize」とは文字通り「楽器=化」ということだと思うが、ガラス管が「楽器」なのではなく、空間全体と、このシチュエーションと、われわれの聴覚と認識そのものが「楽器化」されているのだ。そしてやっぱりエンディングが実にシャープで、佐藤さんてパンクだなあ、とつくづく思った。
・というのは、たとえばインプロのライヴの終わり方で、演奏が完全に終わったのかどうか微妙な感じになり、演奏者同士も互いに互いを推し量り合うような空気が生じて、何となく無音になって暫くしてから、はいようやくおしまいです、ということはよくあって、観客の側からするとその雰囲気や余韻も込みで鑑賞してる部分もあるわけだが、たとえば電気/電子楽器の場合は、つまりは電源を落としてしまえばいきなりスタンと音は断絶してしまうわけで、そういう余韻の無さというか、演奏行為というものに否応なしに伴う共感の持続への遠慮のなさ、という感じが佐藤さんには明らかにあって、この感じはフェードアウトではなく唐突に曲が終わってしまうある種のパンクを聴いた時の痛快感と似たものがある、と思ったのだ。
・終わって暫し談笑(雨がスゴそうで直ぐ外に出る気がしなかったし)。そういえばこの企画について嵐君が書いた煽りのテキストの一文がなかなか強気でよろしくて、アミちゃんも引用してましたが、それはこんなでした。

昨今の形骸化しきった音響や即興やアートや実験的???な音楽への反動から、パフォーマンス至上主義的なバンドスタイルへの移行やそれに伴うビジュアルショック的な表現が目立っていますが、ほとんど結局は相対的に対角線を引いているだけの過去への回帰的なものでしかなく、そんな一見過激に見えるだけのありがちで独立自存で恣意的で軟弱な表現が氾濫する中、ほんとうの意味でハードコアな制作活動を貫き活動を続けてきたWrK(昨年惜しくも解散)の佐藤実主催のイベントが久しぶりに復活します。

おおー。病弱なバンプオブチキンともいうべきその風貌からは想像もつかない嵐君のハードコアぶりが伺える好文章だと思います。とか言われるのを本人が非常に嫌がっていて、元エントリを消すとかゆってたので、敢て保全コピペ(笑)。
・佐藤実の『NRF Amplification』は、「音」という物理的現象の根底に宿るポエジーを鮮やかに艶やかに我々の「耳」へと差し出す、ハードコア・サウンドアートの傑作です。徹底的にコンセプチュアルであることが、そのまま比類なき美学へと転換するという「世界」の真理を、この作品は教えてくれます。これも「音楽」、なのではありません。これが、これこそが「音楽」なのです。
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by ATSAS | 2007-07-14 23:53 | DAYS
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