春日武彦の単著を読むのは初めて。「文学界」に連載されていたもので、同誌の一連の、「文学」部外者による文学論もの、のひとつだが、雑誌ではぱら読みの程度だったのだけど、書店で目次を開いてみて、取り上げられている作家の名前の並びに非常に惹かれて即購入。だってホーソーン、河野多恵子、パトリック・マグラア、古井由吉、ラヴクラフト、日影丈吉、藤枝静男、ブラッドベリ、富岡多恵子、マッカラーズ、車谷長吉、内田百聞、ブルーノ・シュルツとかですよ。きっちりとした長編論考というよりは、ご自身の体験談や記憶のエピソードなども交えた一種の「読書ノート」というべきものだけれど、小説を、というかフィクション全般に言えることだと思うのだが、大文字小文字の「作者」の意識的無意識的な主題や主張に還元するのではなく、還元不可能な異和や解析されざる謎への微細なひっかかりの水準で論じようという姿勢には、非常に共感する。僕自身、これは映画評論をしていた頃からだけれど、要するにいかに偉大な作品をものしたことのある「作者」であれ、時には失敗するし間違えるし自分でもワケのわからないことをするものなんだ、という観点を極めて重要視していて、とゆうか人間てそーゆーものに決まってるじゃんと思っていて、それだけに肝心要のクリティカルな部分になると決まってなぜか愛とかリスペクトが持ち出されてしまう系の批評とは水が合わないままだった(「失敗作を撮れる才能」とかって何ですか?)。あ、あと束芋の表紙画がめちゃくちゃハマってます。