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2007年 01月 23日
前にも触れたとおり、来年度から今年までの慶應SFCに替わり早稲田大学教育学部に非常勤講師として赴くことになっている。前期、後期と半期ずつの二つの科目で、毎度のことながら大学側によって既に用意されていた講義名称には少々(かなり)戸惑いながらも、いわば「〜とかけて何と解く?」的な大喜利的発想でもって(?)シラバスを作成した。
以下はその抜粋。面白い授業にしたいと思う。 前期:科目名「音楽(Jポップスとは何か)」 われわれが現在、ごく日常的に、それがあたかも誰にとっても同定・把握可能なカテゴリーとして存在しているかのように用いている「J-POP(Jポップス)」という言葉は、実のところ、文化的、社会的、政治的、経済的などなどの多様で複雑な関係性と文脈性とを背後に隠している。 本授業では、巷を賑わすヒット曲の成立過程や移り変わり、同時代的な分布などから読み解けるものを、種々の次元において出来るかぎり踏み込んだ形で提示してゆきたい。そのため、講義内容はジャーナリズムと批評の、実践と理論の双翼を自在に往還するものになるだろう。 但し、科目名にも記された「Jポップスとは何か」という問いについては、所謂「ポピュラー音楽=史」に属するような歴史性への言及は必要な範囲に留め、よりアクチュアリティに重心を取った現在進行形の講義を指向したい。 「Jポップス/J-POP」を論じていくことを通して、「J」すなわち「現代日本」の諸問題を多少とも明らかに出来たら、というのが、本授業の最終的/潜在的な目標である。 後期:科目名「音楽史(聴衆と音楽の政治学)」 本授業は同じ担当者による前期科目「音楽(Jポップスとは何か)」の問題設定を踏まえつつ、より広い範囲に対象を取ったものとなる。論じられる対象は狭義の「Jポップス/J-POP」だけではなく、所謂「洋楽」(より正確には「洋楽の日本における受容」)や所謂「インディペンデント・レーベル」等々といった異なるカテゴリー、CDショップやディストリビューション、また雑誌やテレビ、ラジオ、インターネット等における「音楽」の扱われ方についても視点を拡げる。音楽ジャーナリストでありながら音楽レーベルの運営も行なってきた講師の経験や知見も適時、交えた講義となる。 先進諸国においてCD売り上げが下降曲線を延長してゆく状況はもはや常態となっており、今後、日本でもダウンロードや携帯配信が音楽産業の根幹になっていくことは必至だと思われる。しかしそれは単に音楽の受容/消費形態の変化(それだけでも無論、過去になかった程のドラスティックな変化ではある)のみを示しているのか、それともより本質的な「聴衆」の不可逆的な変容をも内包しているのかは現時点では判断し難い。 「音楽」はこれからどうなってゆくのか、視点を大きく捉えつつ考えていきたい。
by ATSAS
| 2007-01-23 16:45
| MEMO
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