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2007年 09月 16日
・入間人間『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃんー幸せの背景は不幸』『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2ー善意の指針は悪意』を続けて読了。やっぱり非常に面白かった。僕はラノベ関係はかなり好き嫌いがあって、まずファンタジーが苦手(その理由はSFマガジンに書いた西島大介論を参照)だしキャラに頼り切ってるのも会話のオモシロさだけで読まされるのもあんまりノレないので、読み始めはするが途中で投げ出してしまうものが実は非常に多かったりするのだが、これにはハマりました。まず文章が上手い。ツッコミと自己言及の波状攻撃は維新系といえばそれまでだけど、寧ろこれを読んで西尾維新のマネとしか思えない人があまりにも多いという点にこそ維新氏の圧倒的な覇権とそのファン層の圧倒的な読書経験の薄さが良くも悪くも露呈しているわけで。よくあるトラウマものといえばそれまでだけど、まーちゃんとみーくんの関係性の秘密と、そこで提示されるひとつの「答え方」には、起こったとされる出来事を僕らの身近な他者との関わりにコンバートしても、十分に妥当する普遍性が備わっていると思う。とりあえず三冊目が出たら必ず読みます。
・小石川図書館4階ホールにて、「〜音とイメージの狭間に〜鈴木治之『語りもの』シリーズ全作公演」。無料とはいえ満員で驚く。器楽演奏と声(語り)と歌と電子音とフィールドレコーディングを自在に組み合わせた、鈴木さんの一連の作品の初の集成。鈴木治之という名前を諏訪敦彦監督の映画『M/OTHER』の音楽家として知っている方も多いだろう。僕はもう結構昔からCDを送っていただいたり、氏が中心となって故リュック・フェラーリを招聘した際にはフランス大使館を紹介したり、どこかのライヴ会場で顔を合わせれば立ち話をするような間柄ではあったのだが、鈴木さんの作曲作品が生で演奏されるのに立ち会うのはこれが初めてだった。休憩を挟んで五曲が演奏され、最後の「前兆ー微光」は初演だった。詳しい感想は又別の機会にしたいが、一言でいうと非常に良かったと思う。フェラーリの音楽とマルグリット・デュラスの映画がこの連作の出発点だとプログラムノート記載のインタビューでは語られていて、それはもちろん一聴瞭然ではあるのだが、僕が他にすぐ想起したのは吉田喜重だった。まるで『煉獄エロイカ』や『エロス+虐殺』や『告白的女優論』をサウンドだけでやっているみたいだ、と思った。同じインタビューの中で、映画音楽を作る際に特に意識していることとして、「何をつけても映画音楽になってしまう」ことと「映像と音楽は本質的に離反している」ことを挙げていて、この認識は僕がムサビでこの数年ずっと続けている(今も続けてる)「サウンドイメージ」の講義で、まず最初に生徒にわかってもらおうとしていることと全く同じだ。音と言葉が紡ぎ出す、物語にはなりきらない物語の群れを堪能した。秋山徹次と佳村萌の語りがどちらも素晴らしかった。最後の新曲で披露された、鈴木さん自身の微細に震える声にもとても感銘を受けた。 ・と、感動している間もなく茗荷谷から電車を乗り継ぎ、急いで三鷹市芸術文化センターへ。劇団サンプル「カロリーの消費」のアフタートークに駆けつける。終演4時40分の所、会場に着いたのは4時半だった。松井さんには心配かけてしまった。会場はほぼ満席。松井さんのこの作品は、おそらく演劇のアマチュアにはわけがわからなくて、そして演劇のプロにはまた別の意味でわけがわからないところが多いにあるのではないかと思える、そう、つまりは「問題作」だと思うのだが、かといってあからさまにこれ見よがしな「問題作」でさえなくて、そうした納得(そこには無理解や反撥も含まれる)の圏域からあらゆる意味で身を引き剥がそうとする振る舞いがあまりにも徹底しているがために、もはや何が「問題」であるのかさえも問うことを禁じつつそのことも問わせようとしないようなものになっていると思う。そのことを喋った。最近の僕としては珍しく(?)かなり批評家的に話したつもりなのだが、如何だったでしょうか(まあああいう話題をイヤな人もいるんでしょうが)。松井周が対峙しようとしている(=対峙させられている)「問題」は、演劇のみに留まることではないと思う。この作品については木村覚さんも早速ブログで言及されている。皆さん、24日までです。是非御覧になってください。詳細はココ。 ・打ち上げに参加させていただく。松井さん、出演者の辻美奈子さん古館寛治さん山崎ルキノさん、今回は音響担当だが青年団では制作の野村さん、名前を聞き損ねたがcinra(?)の青年、制作の三好さん、そして観劇に来ていたユリイカ編集長と西島大介氏。西島画伯の批評魂が炸裂し、松井さんに質問しまくる。あとは某キャラクターズの話とか。「絶対安全で絶対一位ですよねー」とか笑。ユリイカのY君と辻さんが大学時代に「演劇を観る会」ってのに一緒に入っていて、その関係で松井さんとも旧友で、なので松井さんはY君のことを「ヤマちゃん」と呼ぶのだった。僕もこれからそう呼ぼう。 ・帰りの井の頭線でルキノさんと二人になりました。憧れの女優さんなので微妙に緊張してあんまり喋れなかった。というか「緊張してあんまり喋れない」ということを喋ってた気も…。 ・そして事務所に戻って仕事しました。
by ATSAS
| 2007-09-16 23:45
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