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2007年 01月 03日
テキトーにベストテンを選ぼうと思ったら何故か二十作になってしまった。いちおう順不同ということで。
『虹が原ホログラフ』浅野いにお 一冊で完結してるし、やはりベスト1はこれかなと。「世界」と「人生」の掛け算の内にあらかじめ装填された儚さとやりきれなさを無限回転し続ける構造の中に閉じ込めた比類なき名作。「クイックジャパン」に短い文章も書いた。「このマンガを読め」とかだと『ソラニン』の方が好きって人の方が多いみたいだけど、それってバンド経験者(そして作中で描かれるのと同様の恋愛経験者)が共感してるだけでは?(『ソラニン』もすごく良いけどね)。 『わにとかげぎす』古谷実 ちょうど2巻が出たばかり。古谷実がすごいのは、一作ずつ以前までの歩みを踏まえて必ず先に進んでいること。それはおそろしく困難な歩みなのだけど。僕の古谷論集成は、表紙も『僕といっしょ』から引用させていただいた『ソフトアンドハード』に一挙収録されている。この作品についても完結したら長い文章を書くつもり。 『スワンパン』一條裕子 一條さん大好き!。昔、インタビューでお目にかかったことがあるのだが(これ前にも書いたけど)はしのえみ似の大変可愛らしい方でした(ホントに似てたよ)。題材が変わるだけで割と同じパターンといえばそりゃそうなのかもしれないですが、これでいいのだ!。ウェブ(http://1jo.info/)で何度も刊行予告が変更された『金子の部屋』はまだ出ない。どうしたんだフリースタイル?!。 『24のひとみ』倉島圭 「朝まで生ライフ」でも紹介した。ウソしかつかない(と自ら宣言する)24歳のひとみ先生に生徒達が翻弄されるナンセンス・ギャグ。いわゆる「クレタ島人のパラドックス」をとことんネタにした、三浦俊彦氏必読(?)の傑作。もうすぐ2巻が出るらしい。あんまり面白かったので同じ人の4コマ集『メグミックス』も読んでみたけど、下ネタばかりでイマイチだった。 『LIAR GAME』甲斐谷忍 既巻3巻。これも「ウソ」ネタだが、こちらは『24のひとみ』とはまるで違って(当たり前か笑)、知力を尽くした騙し合いゲームをスリリングに描く。まあ『カイジ』以後、という作風なのだが、それぞれのゲーム/ルールもよく練られていて、今後もっと盛り上がりそうな予感も。思わず『ONE OUTS』全19巻もアマゾンで大人買いして一気読み。頭脳(トラップとギミックとミスディレクション)だけで勝ち続ける斬新きわまりない野球漫画。 『デトロイトメタルシティ』若杉公徳 既刊2巻。結局、2006年はコレだった的な声しきりですが、このオモシロサを隅々まで楽しめるのはある年代の人に限られるのじゃないでしょうか?(そしてマンガベストを選んだりする方々も多くが同じ年代であるだろうことが軒並み上位食い込みの理由の一端ではないかと)。僕的には超笑えるけれど。でもこのパターンで引っ張るのはあと一冊ぐらいが限度じゃないかな。ヒットのおかげで陽の目を見たらしき旧作『アマレスけんちゃん』も面白かった。 『スミレ16歳!!』永吉タケル これは「スタジオボイス」のコミック特集で初めて存在を知った。黒装束でヒゲズラの謎のオヤジが操るスミレっていう人形が転校してくるというギャグなのだが、しょうもねーとか思いつつも、割と泣かせるオチが多くて、結構感動してしまったり。萌えミックスしか狙っていない連中には思いつかないかもしれないが、むしろこういうのをアニメ化した方が一般的にはウケるんじゃないの? 『よつばと!』あずまきよひこ 順調に既刊6巻。我が家には元ヘッズのかくたみほ撮影による「よつばとカレンダー」が2年連続で貼ってあるよ!。このマンガが他の凡百の類似作と決定的に異なるのは、よつばちゃんがちゃんと成長している、時間がちゃんと動いているということ。よつばちゃんは単なるピュアネスの象徴=天使じゃなくて、邪悪な部分や未熟な部分も持った、つまりはおかしなバイアスがかかっていないだけのフツウのこどもで、だからちょっとずつ大人になっていくんだけど、それはどんな人間だってそうなわけで、要はおかしなバイアスのかかってないフツウのちゃんとした大人になればいいわけだ(って何書いてんだろ?)。 『ムーたち』榎本俊二 天才。榎本さんは阿部和重と日本映画学校で同級生だったそうだが、これは中原昌也や福永信や青木淳吾が小説の世界でやっていることをマンガでやっている、という感じ。コマ割りとか構図とかもホント凄い。第1巻が出たばっかり。 『サナギさん』施川ユウキ 前にウチのミカちゃんに薦められたんだが、そのままにしていて、こないだふと思いついて既刊3巻をまとめ読みしたらハマった。でもこれ「ほのぼの」じゃないでしょう?。なんかやたら哲学的じゃないですか。つい『もずく、ウォーキング! 』(既刊1巻)と『がんばれ酢めし疑獄!!』(全5巻)も読んでみたけど、どれもすごく面白かった。4コマギャグとしては色んなパターンの笑いが入っているのだが、とにかく時折ポカリと出てくる思弁的な台詞に虚を突かれる。まるで野矢茂樹の本とかをネタにしてるみたいな…なんて書くと大袈裟だけど。 『世界の孫』SABE 既刊1巻。SABEという人は昔から名前だけ知っていて、ニシやん(ことヘッズの西山君)に何冊か借りて読んでみたりもしたのだけど、なんだか僕の苦手なタイプの楽屋オチを多用してる感じでイマイチ乗れなかった。でもこれは面白い。なんか妙にネジレてる所がよい。孫キャラって確かにいるよね(笑)。僕も割りと「孫」の色が濃いコドモだったのだが。 『フライングガール』笠辺哲 2巻完結。脱力した絵柄も特徴的だが、お話もかなり変。微妙に(健康的な)お色気要素も入った、ヤングアダルト向けのSF(少し不思議、のエスエフ?)というか。ちょっと藤子F不二雄の大人短編を思い出す。一カ所、すごい笑ったところがあるのだが、さあそれはどこでしょう?。ちょっぴりラファティぽい感じもある。 『荒川アンダーザブリッジ』中村光 これもスタボイのコミック特集で知った。『僕といっしょ』ぽいとか書いてあったけど、それは違うと思うが、でも面白い。エスカレートするギャグと純情リリシズムとのバランスも良い……と思ってたのだが、出たばかりの4巻ではちょっと停滞気味のような。あと関係ないが、どうも作者が美人なような気がする。 『正義警官モンジュ』宮下裕樹 アシモフ以後(?)ロボットもの。絵が上手。試作品として作られたロボット警官が「心」に欠陥を負っていて、というお話はありがちといえばありがち。でも許す(何様だ?)。あんまりアンハッピーなラストにはなってほしくないなあ。既刊3巻。 『転校生 オレのあそこがあいつのアレで』『これが未来だぜ!』古泉智浩 年末にこの人のマンガを一気読みした。どれも非常に面白かった。童貞、ニート、無気力高校生など、ダメな奴らのダメなりの活躍(でもダメなんだが)はペーソスを超えて最早パワフル(だがダメ)。反撃に転じた初期いましろたかしという風情も。映画版『青春☆金属バット』はまだ観てないのでDVDで見ようと思います。 『縮小チーム石田』亜太川ふみひろ 1巻完結。どうも僕はこういうしょうもないダメ系のギャグが好き。ずいぶん前の作品だけど(完結が2001年)、同じ作者の4コマ『フルパワーMONKEY』も読んでみようかな。 『真説ザ・ワールド・イズ・マイン』新井英樹 今更ワタシごときが何を言いましょうか。まちがっても「セカイ」とは翻訳されない「ザ・ワールド」を怒濤の漫画力で描き切った全5巻。こんな物凄いヴァイタルな主人公が登場する物語は、他には石川淳の『荒魂』ぐらいしか知らない。読了するとグッタリ疲れる。 『鈴木先生』武富健治 一部でやたら評判の異色の教師マンガ。教室という空間の中では、驚くほど小さな問題が異様に大きな事件へとたやすく変換される。内省と苦悩を重ねて、「生徒」という他者とのコミュニケーションに取り組む鈴木先生の姿は、どこか不条理の陰を湛えてもいるが、それだけに行く末が気になる。 『カラスヤサトシ』カラスヤサトシ これもしょうもない系4コマ。自虐ネタってセンスがいるんだよね。これを読んで「だからどうした?!」と怒気を込めて問えるような男女とは僕はお友達にはなれません。 『シグルイ』山口貴由 ふと思い立って(と僕はよく書くが、本当に「ふと思い立って」としか言い様がないのだ。しかしそれにしてもよく「ふと思い立って」いるものだとは思うが)元旦に既刊6巻までを一気読み(だから正確には2006年じゃないんだけど1巻だけは去年読んだので許してくださいな)。僕はグロいのも残酷なのもどちらかといえば不得手なのだが、これは引き込まれた。こんなに内臓が出てくるマンガって読んだことないな(ってよく言われてると思うけど)。それと物語が自在に過去へ過去へと遡っていくところが非常に面白い。こういうややこしいことを雑誌連載でやれる(やってもいい)というマンガの世界は興味深い。とにかくコマの立ち方、テンションが尋常じゃない。トラウマになるような絵だらけ。クライマックスがいよいよ迫っているような感じなので、続刊に期待したい。 再三書いていることだが、僕はマンガ雑誌をまったく読まないので、これらのほとんどは二日に一度(以上)は立ち寄っている渋谷ブックファーストのコミック売り場の品揃えとレイアウトにかなり依存していることをお断りしておく。あとそういえば『DEATH NOTE』とかもあったけど結構前だったのでつい忘れてた(笑)。それと『20世紀少年』は巻数ヒトケタの段階で「完結したら纏めて読もう」と思ったのにその後も延々と終わらず、今やどういう話になっているのか皆目見当もつかない。
by ATSAS
| 2007-01-03 21:09
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